CALENDAR
S M T W T F S
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031 
<< August 2018 >>
ARCHIVES
CATEGORIES
<< 「分からないけどなんか面白い」の創出 | main | 『東日本大震災警察官救援記録 あなたへ。』を読んで >>
言語との付き合い方について考えたこと(『世界の非ネイティブエリートがやっている英語勉強法』を読んで)



ノウハウ本的なものはまったく読まない私だけど、Twitterでも興味深く発言を読んでいる齋藤淳さんの著書で「非ネイティブエリート」というキーワードに惹かれて購入。実用的にも実際に英語を教えている立場の人間にとってもとても参考になる内容だった。

私が非常勤先でやっている英語によるディスカッションゼミで学生達が一番苦戦しているのも、思っていることをすぐに言葉で伝えるっていう部分。自分の状況や伝えたいという思いが先にあり、そのツールとして英語が出てこないことにもどかしさを感じてしまう。日本語でさえ自分の伝えたいことを正確に伝えるって難しいのに、いわんや英語をや、という感じだ。本来は、まずは自分の伝えたい状況が先にあって、自分が一番得意なことば(私の場合は日本語)では伝えられないので、相手との共通ツールとして他の言語(たとえば英語)があるんだけど、日本の英語教育ではまず言葉があってそこから状況を伝える(和訳や日本語での文法説明)、という方式で行われている。

私は、初期段階での文字・文法指導は非常に大事なのできっちりやるべきだと考えているが、ある程度の英語力(TOEICで半分取れるくらいの)がついたら、あとは自分の考えをその英語を使ってアウトプットする方向へ勉強/教育方法を変えてもいいのではないかと思っている。

個人的に、今までの英語の勉強で一番自分のアウトプット英語力につながっていると思うのは、バイリンガルの大学院に行っていて、ゼミ仲間や会議で英語で議論せざるを得ない環境に置かれたことと、英語で話すドラマ&映画を英語字幕で見たことの2つだ。後者は趣味と実益を兼ねて今でもよくやっているし、前者は仲のよい友達とはだいたい英語が媒介言語だったり、海外主張や学会発表なんかを通じて、定期的に話す機会とモチベーションを得られていると思う。

本書にもあった、ネイティブに指導して貰えれば英語が伸びるというのも大きな間違いというのは私も同意していて、実際に私が英語を最も参考にして学んだのは、まさにこの本のタイトルにあるような非ネイティブエリートたち。英語のネイティブは確かにネイティブしか使いこなせない言い回しとか、英語を使っている時間の長さがもたらしたこなれた表現の魅力のようなものは確かに存在するけれど、非ネイティブで意識的にあとから英語を吸収した人の方が、文の組み立て方が参考になるのだ。文の構成の仕方も、ノンネイティブは意識的に行って話しているので真似しやすい。


この本を読んだ前後に、こんなネット上のエントリーも読んだ。

避けて通れない大問題。「英語」について

言葉を使って人とコミュニケーションを取ること自体は基礎中の基礎であり、何語にしろ言語能力を磨くのはみんな努力したほうがいい。

一方で、言語っていうのは限られた人が持つ特権でもあるってことを忘れてはいけないと思う。
生まれ育った環境とか新しい言語を学ぶための時間とかお金とか、色んなものが揃ってこそ言語という財産を得ることができる。

私が授業をするときにかなり意識的にやっているのは、学生の話を聞いている時に必ず肯定的な態度で相づちを打つこと。

ちゃんと聞いていて、そして相手が言葉を探して沈黙しているときも「聞いてるよ、言いたいこと聞こうとしているよ」という態度をきちんと出すようにしている。上のエントリーにあったように、私も自分の言いたいことがうまく言えなくて、いわゆるネイティブの人に「はぁ?」と顔をしかめられたりして気持ちが萎縮した経験がたくさんある。対学生ではより英語という財産をより多く持っている立場にいる今はいるけれど、同じことはしたくないと切に思う。伝えたいという思いがあるけれど伝えるための道具を持っていない人はたくさんいて、それど努力不足やましてやその人の能力や人間性の否定につなげてはいけない。

この話は英語だけじゃなくて、日本語話者である日本に住む人々にもいえる。6年後、オリンピックで海外からの旅行客をたくさん受け入れるときに、非日本語話者で日本語を少し学んでいる人や旅行者の話す日本語を、たとえ分かりにくい日本語でもたどたどしくても、伝えたいと思っている人の言葉は一生懸命聞くという態度を持つことが重要なのではないか。

最後に、この本のエピーローグにあった「どうしたら自分のインパクトファクターを社会に対して最大化できるか」という考えのもとに英語の塾を開くことにしたという道の開き方に感銘を受けた。私も自分と社会をそういう関係性で捉えたい。



私は言語を学ぶのが好きである。そもそも勉強自体が好きな方なので(新しいことを知るという意味での勉強ね)、新しい言語を知っていて、人とコミュニケーション取れたり、言語を通して新しい発見や知識を得たりするのがとても楽しい。もちろん、資格や目標があるとそれに届かない自分に直面するので苦しいこともあるし、努力しているつもりでも自分が勝手に設定した期待値に届かないことも多々あるので、凹んで嫌になることもたくさんある。でも基本的に、言語を学ぶのは楽しいと思う。

英語ができたら幸せになれるよ!と言えるほど私はおめでたくはないけど、英語に関連する授業をやっている非常勤講師として、新しい言語や新しい言語を通して何かを学ぼうとする人が、これって結構幸せなプロセスなんじゃ?と思えるようなお手伝いを出来たらと考えている。
| | 16:04 | comments(0) | - |
コメント
コメントする