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読書『ネットと愛国』






在特会を語ることで、在特会を生み出したこの社会や普通の人々に潜む「在特会的なるもの」を描き出した圧巻のノンフィクション。最終章で、安田さんは「理解でも同情でもなく、ただ在特会に吸い寄せられる人の姿を知りたかった」と書いているが、最後まで読んで思ったことは、この本は在特会を批判するものでもあげつらうものでもなく、在特会という特異な存在の下に潜む、この社会の狂気だ。家や家族としての組織がもたらす「連帯」や「団結」は、うまくいかないという焦燥や孤独をかき消してくれる。ネットの世界は現実社会と違って人々をセレクトしない。その懐の深さが多くの人を受け入れ、認めてくれるという感覚と居心地のよさを生み出している。そしてそっち側に行くのは、決して難しいことではないということ。


この本には様々な批判が寄せられているのを見る。自分が持つ思想や信条から在特会の主張自体に疑問を呈する内容に反対する在特会側の人もいれば、あまりに在特会に寄り添いすぎているという取材態度の批判をする人もいるという。ものすごい量インタビューと、綿密な取材によって描かれたものであっても、当然安田さんの会える人、安田さんから見える世界を描いたものであるから、様々な批判があるのは仕方がないようにも見える。しかし、在特会なるものへの問題提起はものすごく重要であり、それ以外の批判はどうでもいいものに思える。

在特会の人びとが「反エリート主義」や「これは階級闘争だ」と話すのを聞くと、聞き慣れた構造に安心した一方で、最後の方に書かれていた市井の「いい人たち」の中に潜む無自覚な差別の感情や、目に見えない在特会への支持を、より恐ろしく感じる。「日常生活のなかで感じる不安や不満が、行き場所を探してたどり着いた地平」が「愛国よという名の戦場」という症状は、けっして「うまくいかない」人や生きづらい人達だけに生まれているものではない、と思う。


私の担当する「多文化交流ゼミ」という授業の中で、移民に関するテーマでディスカッションをしたときも、「日本に同化できないなら帰ればいいのに」「税金もきちんと払っていないのに、権利を主張するのはおかしい」という発言をさらっと言う学生がいる。英語で話しているから、言えることに限界がある、主張が単純化されるということを差し引いても、まじめで勉強熱心で、多文化交流や国際的なことに興味がある若い学生が持つ、そのシンプルで迷いのない感覚を恐ろしいと思うことがある。優秀で難関の公立大学に入学し、何不自由なく暮らし、将来の夢に満ちあふれ、友達が多くてリア充の代表みたいな彼女たちが持つ感覚にも在特会を支えるロジックは潜んでいる。

安田さんの言うように、在特会のいる「あっち」側と、普通の人々が住む「こっち」側には明確な境界線などないのだ。だからこそ在特会の叫ぶことばは対岸の火事などではなく、それを導きだすロジックや感情は自分のなかにもきっとどこかにあって、その引き金もあっちこっちに散らばっているのではないかと思う。



私も一章書かせていただいている本が出版されたので、こちらもどうぞ。


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