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みんな、村上春樹いい!って本当にそう思ってるの?



春樹の新刊が出たときのフィーバーといったら、キャベツの100円ワゴンセール並みの売れ方だった。
私は通りがかった紀伊国屋の新宿南口店で発売日の夜に購入したのだが、飾り棚は上から下まで『多崎つくる』。3階の入り口からレジにすすむまでの棚にも平積みされていて、あげくにはこれは本当に本を陳列するものなのか?と疑いたくなるような白い籠風のワゴンに入れられて売られていた。そこに群がる妙齢の女性たちをかき分けて、私も一冊。

私が通う横浜は関内のジムと同じビルに入った本屋さんでは、未だ(5月の初め)レジ前の陳列棚がすべて『多崎つくる』と村上春樹解説本だった。春樹が新刊を出せば売れる。こんなに読者(とprospected読者)からの信頼が厚い作家も早々いないのではないかと思う。

私が春樹で嵌ったのは『羊をめぐる冒険』と『ダンスダンスダンス』。この二つは中学生くらいのときに繰り返し読んだ。春樹っぽい表現を真似して文章を書いてみたり、春樹の小説の中の主人公っぽい物言いとか行動をしてみたり、春樹の解説本(ファン本)もかなり読んだと思う。でも高校生の後半くらいから、ちょっとずつ心が離れていって、それでも毎回新刊が出るたびに、初日に買うくらいの熱心な読者ではいる。


今回は、春樹の新作を読み進めていて、大ファンだった中学生の頃には気にならなかった偏った女性の描き方と自意識過剰気味の主人公の男に対するいらだちがふつふつと湧いてきた。きっと読み手である私自身が変わってしまったんだろう、と思う。

昔は気にならなかったけれど、今はそれが気になって他の部分を楽しめない。それどころか、彼が小説という形を通してこの物語に反映しているものに対して、拒否感が生まれて来てしまっている。

例えば。

春樹の作品に出てくる女の子は大抵、ー分の美貌を持て余す美女、顔は中の上だが表現力豊かで愛嬌がある女、F団的な造形をもっていて主人公が好きになるタイプの顔/姿の女、の3パターン。

語り手である「僕」や「彼」は(自称)取り立てて特徴のない顔かたちをしているんだけど周りからは割とイケメンと思われていて、「毎日シャワーを浴び、丁寧に髪を洗い、週に二度洗濯を」するような清潔でポテンシャルの高い自立した男で、耳だったり品の良いカットソーの着こなしとかがすてきな女性とつき合ったりする。

そしてその主人公の男は、朝はフレッシュジュースを飲み、お風呂に入ると耳の後ろとか髪とかを念入りに洗い、趣味のいいジャズかなんかをかけながらパスタや分厚く切ったトーストなんかを食べ、アイロンの効いたこざっぱりしたシャツなどを着るんだよね。無頓着なフリしているが非常に自覚的。

その上、作品のうち1回以上は鏡に自分の全身や顔を映しては新しい自分を見いだし、朝起きると固く勃起していて、気づくと裸の女の子二人が横に寝ていたり、女の子が手際よく彼女の中に導いてくれたりする。


春樹の本は面白いけど、こういう毎回ワンパターンな男女像(そのうち男は自分)に食傷気味なのだ。


あとどうでもいいけど、春樹の描写に出てくる女の人のファッションって、想像してみるとどう考えても微妙じゃないか?と思うことが多い。茶色系統のスーツでネイルも茶色とか、春樹の「素敵」って随分ニッチなところをついているんじゃないかと思わざるを得ない(やたらと白いテニスシューズばっかり履くし)。

なんだかんだいって、春樹の本は出たら毎回絶対買うと思う。これからも、それも発売当日に。部分的に受け入れられないものはあるものの、全体のストーリーや細々した描写のうまさや、台詞回しの面白さなど、春樹でしか味わえない特別感を買うのだと思う。

一度ど嵌りした作家の作品って、もう麻薬みたいなもので、たとえ何度か失望したり、昔程夢中にならなくてもきっと毎回買ってしまう。うきうきと前のめりで、そしてその熱中したときと同じ温度できっと面白いはずっていう期待を持って。


それにしてもこの本、この厚さでこの装丁ならば、1500円でも良かったのではありませんか?1700円というのは、一般の人が新刊の単行本(小説)に出せる結構ぎりぎりのラインだと思うけれど、まあ春樹だったらたとえ1500円や1600円じゃなくて1700円でも売れるだろうからなあ。

ちなみにもう1人、私がまず間違いなく新刊買いますよの作家、伊坂幸太郎の『ガソリン生活』は1600円でした。ユーモラスで人間愛に満ちていて、読んでいて幸せでした。一生買い続けます、伊坂先生。(『砂漠』と『重力ピエロ』が好きすぎて嵌った。3回くらい続けて読んでしまったもの。伊坂小説に出てくる登場人物は、何故かみな愛らしい。)


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